「絵本書いたことある?」
私が入社して間もなく、会社の仕事を覚えるので必死だった頃、「いしだえほん」の企画が立ち上がり、配属部署で言われた一言がこちらでした。
もちろんそんな経験はありません。それは新しいプロジェクトとして石田製本が絵本を始めているということであり、私は思わぬ仕事に胸が躍りました。
もともとイラストを描いたり、クリエイティブな仕事が夢ではありましたが、石田製本での仕事はPCを使ったデータ制作だと思い込んでいたため、驚きとともに、想像がつかないお話でした。
しかし、いざ絵本づくりの仕事がはじまり、事務机で画用紙にクレヨンを滑らせ絵を描いていく作業はとても楽しく、これが仕事なんて嬉しい限りで信じられないと思いました。
ようやく絵本の内容が全てできあがり、データを印刷部に回した後は、わくわくと胸が高鳴る思いで完成を待っていました。
そして、工場の人から「できたよ」と絵本を渡されたときは、自分の絵本を見て、データとしてではなく、そこにある「モノ」としての価値を深く感じました。最初はなんだか不思議な感じでしたが、完成した本をいろんな方向から眺めたり、表紙を何度もめくってみたりしていると、だんだんと実感が湧き、とにかく嬉しい気持ちでいっぱいでした。たくさんの人が手間暇をかけて完成した一冊は、宝物として今は家に飾られています。
現代では、アナログの代名詞であった本もインターネットを介して閲覧でき、便利で手軽に移り変わっています。
しかし、生まれたころからインターネットと共に生きてきた私だからこそ、人々の暮らしをより豊かにするデジタルの良さと、人々に情報媒体としてだけではなく、かけがえのない思い出や、ぬくもりを与える本の良さをお客様に様々な角度からアプローチをしたい。
そして、「まごころをこめた本ノづくり」をするそんな会社の社員として、本づくりの楽しさや、感動をお届けする製品で伝えていきたいと思っています。